投稿

3月, 2018の投稿を表示しています

難波一族記【1】~経遠編~ 第九章 保元の乱・火攻め

イメージ
  9.保元の乱・火攻め 保元元年(一一五六年)七月十一日、早朝。 白河北殿では、依然として激しい戦いが続いていた。 源為朝の強弓をはじめ、上皇方の頑強な抵抗により、清盛の軍勢も攻めあぐねていた。 そんな中、源義朝が戦局を打開すべく、白河北殿への火攻めを進言したのである。 「何と! 御所に火を放つというのか!」 知らせを聞いた経房は驚きの声を上げた。 「うむ。このまま攻め続けても、いたずらに兵を失うばかりじゃ。義朝殿も覚悟を決めたのであろう」 経遠は白河北殿を見据えた。 義朝の献策は信西を通じて後白河天皇に伝えられ、ついに火攻めの許しが下された。 やがて、白河北殿の西隣にある藤原家成の邸宅に火が放たれた。 折からの風にあおられ、炎は瞬く間に勢いを増していく。 「おお! 火が上がったぞ!」 兼康が大声を上げた。  「三郎、兼康殿! 我らは北門を固めるぞ! 炎に追われた敵兵が押し寄せてくるやもしれぬ!」 「承知! 今度こそ我らの出番じゃ!」 経房は太刀を握り直し、郎党たちに号令をかけた。 やがて炎は白河北殿へと燃え移り、御所からは悲鳴と怒号が響き始めた。 「兄者! 女や童まで逃げ惑っておるぞ!」 「戦に関係のない女や童は逃がしておけ。無用な殺生はするでないぞ!」 経遠は郎党たちをまとめ、崩れ始めた上皇方の軍勢に備えた。 その時、炎の向こうから武者たちの叫び声が聞こえてきた。 「御所を守れ! 決して退くな!」 燃え盛る白河北殿。 源為義や為朝らがなおも抵抗する中、崇徳上皇方の命運は、いよいよ尽きようとしていた。 経遠は馬上で太刀を掲げた。 「三郎! 兼康殿! 最後まで気を抜くなよ!」 難波兄弟は、再び戦火の中へと駆け出していった。 ※この物語はフィクションです。