難波一族記【1】~経遠編~ 第五章 保元の乱、平治の乱②
5.保元の乱、平治の乱②
「皆、揃ったな」
若いが低く重い声が場を支配した。
経遠、兼康をはじめ、その場に居並ぶ侍大将たちは一斉に膝をつく。
中央に座すは
平清盛
その眼差しは静かでありながら、底知れぬ圧を放っていた。
「此度の都の騒動、もはや避けられぬ。
上皇方(崇徳上皇)と帝方(後白河天皇)、両陣に分かれ、刃を交えることとなる」
ざわめきが走る。
「これは――内乱にございますか…」
思わず経遠が呟いた。
清盛はゆっくりと頷く。
「然り。我らは帝方に加勢する。しかし、右馬助叔父(平忠正)や源為義は上皇方につくだろう。しかし、為義の子息・義朝は我らと同じく帝方につくという。この内戦は世代交代の側面もあるかもしれぬのう」
清盛は眼を閉じて呟く。
夜の京。
重く沈む空気の中、兵が静かに動き始める。
経遠は甲冑を整えながら、静かに息を吐いた。
「いよいよだな、三郎」
「兄者、相手は誰だ?」
「左大臣、そして右馬助殿…。だがわし等は源 為義の軍勢を狙うぞ」
経房の目が細くなる。
「……面白ぇ。腕が鳴るわ」
「油断するな。
都の戦は海とは違う。逃げ場はない」
経遠の声はいつになく鋭かった。
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