難波一族記【1】~経遠編~ 第十章 保元の乱・戦の代償
10.保元の乱・戦の代償 京の空は、夜が明けても赤く染まっていた。 白河北殿は焼け落ち、崇徳上皇方の軍勢は敗走した。後白河天皇方の勝利によって、保元の乱は決着を迎えたのである。 しかし、戦場に勝利の喜びはなかった。 焼け焦げた建物の間には無数の亡骸が横たわり、負傷した兵たちのうめき声が響いていた。 経遠は血に染まった太刀を納め、炎の残る御所を見つめていた。その傍らには弟の経房がいた。 「兄上、これで戦は終わったのか」 「ああ。我らは勝った」 そう答えた経遠であったが、その表情は険しかった。 昨日まで同じ都に暮らしていた者たちが、朝廷の争いによって敵と味方に分かれ、互いの命を奪い合ったのである。 経房は、足元に倒れていた若い武士に目を向けた。 「この者にも、帰りを待つ家族がいたのであろうな」 経遠は何も答えなかった。 やがて戦いに敗れた者たちへの厳しい処断が始まった。生き残った者にも容赦なく裁きが下され、都には新たな悲しみと恨みが広がっていった。 武士たちは朝廷の争いを武力によって決着させた。しかし、その勝利は平穏をもたらすものではなかった。 経遠は焼け落ちた御所に背を向け、経房とともに歩き始めた。 戦いは終わった。だが、人々の心に残された恨みまで消えたわけではない。 この戦いを機に、武士たちは朝廷の権力争いに深く関わるようになっていく。 そして、わずか三年後。 京の都は再び戦火に包まれ、経遠と経房もまた、新たな時代の激流に巻き込まれていくのであった。 ※この物語はフィクションです。