難波一族記【1】~経遠編~ 第八章 保元の乱・激戦
8.保元の乱・激戦 保元元年(一一五六年)七月十一日、早朝。 為朝の強弓を前に、平家の軍勢は思うように前進できずにいた。 その様子を見た清盛は、為朝との正面からの戦いを避け、北門へと兵を移すことを決断した。 「兄者! あの為朝を放っておくのか!」 「馬鹿者! 戦は一人の武者を討つことが目的ではない。清盛公の命に従うぞ!」 経遠と経房、そして兼康は郎党を率いて北門へと向かった。 一方、清盛に代わって為朝の守る西門へ攻め寄せたのは、源義朝であった。 義朝は為朝の実兄である。 「何と! 今度は兄弟同士の戦か!」 経房は驚きの声を上げた。 「うむ。義朝殿とて、弟に刃を向けるのは本意ではあるまい」 経遠は複雑な思いで西門を振り返った。 やがて北門へ到着すると、三人は再び上皇方への攻撃を開始した。 「おう、難波殿! 今度こそ我らの出番じゃ!」 兼康が大声で叫び、経房も負けじと敵陣へ突き進んだ。 しかし、上皇方の抵抗は激しく、北門でも容易に突破口を見いだせなかった。 さらに西門では、義朝の軍勢も為朝の強弓に苦しめられていた。 「兄者! あの為朝、実の兄が相手でも容赦せぬとは!」 「それほど父の為義殿への忠義が厚いのであろう。敵ながら見事な武者じゃ」 経遠は太刀を握り直した。 しかし、戦いは長引き、両軍ともに多くの犠牲を出していた。 その時、一騎の使者が清盛のもとへと駆け込んできた。 源義朝が、膠着した戦局を打開するため、新たな策を進言したとの知らせであった。 ※この物語はフィクションです。