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難波一族記【1】~経遠編~ 第十七章 平治の乱・三条殿炎上

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  17.平治の乱・三条殿炎上 夜空が赤く染まっていた。 「兄者!」 経房が屋敷を飛び出す。 遠くから炎が見えた。 三条殿である。 そこは後白河上皇が御所として用い、院政の政務を行っていた重要な場所だった。 その御所を、藤原信頼と源義朝の軍勢が襲ったのである。 藤原信頼と源義朝の軍勢は、後白河上皇の御所を襲撃した。 御所を取り囲み、上皇を拘束したうえで、建物に火を放ったのである。 京の町に悲鳴が広がった。 「三条殿が……」 経房が呟く。 炎は夜空を焦がし、黒煙が都を覆っていた。 「郎党を出す!」 経房が振り返った。 だが経遠が、その腕を掴んだ。 「待て」 「また待てというのか!」 「今、三条殿へ向かって何をする」 「逃げる者を助ける!」 「そのために源氏の軍勢と戦えばどうなる」 経房が言葉を失った。 信頼らは後白河上皇を押さえている。 いま彼らに刃を向ければ、それが何を意味するのか。 経遠は見誤るわけにはいかなかった。 「三郎、お前の郎党を使え。戦うのではない。炎から逃れてくる者を六波羅へ導け」 経房が兄を見る。 「それならよいのか」 「ああ」 経房の顔に力が戻った。 「任せろ!」 数人の郎党を率い、経房が闇へ消えていく。 経遠は残った者たちに命じた。 「門を閉じるな。女子供、武具を持たぬ者ならば入れよ。ただし武者が紛れ込まぬよう、よく確かめるのだ」 「はっ!」 六波羅が慌ただしく動き始めた。 しばらくして経房が戻ってきた。 その後ろには、老人や女、幼い子供たちがいた。 「こちらじゃ! 急げ!」 経房自身も、一人の童を抱えていた。 経遠はその姿を見つめた。 保元の乱以前の経房ならば。 燃える御所を見れば、敵のいる方へ真っ先に走っていただろう。 だが今は違った。 「三郎」 「何じゃ、兄者!」 「その子を奥へ」 「分かっておる!」 そう言って走り去る弟を見送り、経遠は再び炎を見る。 そのとき、一人の郎党が駆け込んできた。 「経遠様!」 「申せ」 「後白河上皇は、信頼方の手に落ちたとのこと!」 さらに別の者が続いた。 「信西殿の屋敷にも兵が向かっております!」 経遠の表情が険しくなった。 「信西殿は」 「すでに都を離れたとの噂もございます」 経遠は黙った。 炎の向こうで、何かが崩れていく音がした。 これは保元の乱とは違う。 軍勢が二つに分かれ、正面から戦ったのでは...