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難波一族記【1】~経遠編~ 第十九章 平治の乱・清盛帰還

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  19.平治の乱・清盛帰還 数日後。 六波羅の門前が騒がしくなった。 「清盛様がお戻りじゃ!」 その声が響く。 経遠は屋敷を飛び出した。 経房も続く。 街道の向こうから、武者の一団が近づいてくる。 その中央にいたのは、平清盛である。 旅装のままだった。 熊野参詣から急ぎ戻ったため、その顔には疲れが見えた。 しかし、目には力があった。 その傍らには、嫡男・平重盛の姿もあった。 重盛――清盛の長男であり、次代の平家を担う若き武将である。 さらに、その後方から大きな声が響いた。 「次郎殿!」 経遠が見る。 「太郎殿!」 瀬尾太郎兼康だった。 兼康もまた、自らの手勢を率いて京へ戻ってきたのである。 馬から降りるなり、兼康は経遠の肩を叩いた。 「次郎殿! わしのおらぬ間に、ずいぶん面白いことになったではないか!」 「面白がるな、太郎殿」 「はっはっは! 相変わらず堅いのう!」 経房が横から口を挟む。 「太郎殿、遅かったではないか」 「三郎。お主、わしのいない間に勝手に戦っておらぬであろうな」 「兄者が止めるから戦えなんだわ!」 「それでよい」 経遠と兼康の声が重なった。 経房が顔をしかめる。 「二人して何じゃ!」 そのやり取りを見ていた清盛が、わずかに笑った。 「変わらぬな、そなたらは」 三人はすぐに姿勢を正した。 「清盛様」 清盛は経遠を見た。 「次郎」 「はっ」 「都の様子を申せ」 経遠は即座に答えた。 三条殿への襲撃。 後白河上皇の拘束。 信西の死。 源氏勢の配置。 六波羅周辺の道。 これまで郎党を使って集めた情報を、経遠は一つずつ報告した。 清盛は黙って聞いていた。 やがて口を開く。 「よく調べた」 「恐れ入ります」 兼康が腕を組む。 「清盛様。ならば、すぐにでも討って出ますか」 経房の目も輝いた。 「俺もそう思います!」 「三郎」 経遠が睨む。 清盛は首を振った。 「まだじゃ」 経房が目を丸くした。 「まだ……でございますか」 「今、兵を出せばどうなる」 誰も答えない。 清盛は続けた。 「信頼は上皇を押さえ、朝廷を動かしておる。わしらが先に刃を向ければ、平家が逆賊とされるやもしれぬ」 経遠は静かに頷いた。 兼康が唸る。 「なるほど」 経房だけが納得していない顔をしている。 清盛はそんな経房を見て笑った。 「三郎」 「はっ」 「太刀は研いでおけ」 経房の顔が...